FAQ 2-12. 地震雲(2019年10月修正)FAQ

質問

地震前に地震雲が現れるという話をよく聞きます。本当でしょうか?

回答

地震研究者の間では一般に、雲と地震との関係はないと考えられています。
地震の前兆としての「雲」に関する研究は、過去に何度か発表されたことがあるのは事実で、雲と地震の関係が皆無であると断言はできません。しかしながら、過去の報告例は大地震の前にたまたま特異な雲の形態をみたことで、地震と特異な雲の形態を結びつけてしまうケースが圧倒的に多いのではないかと考えられています(その一方、地震が起きなかった場合には雲のことを忘れてしまいます)。

雲はその場の大気の状態や付近の山岳などの地形次第で、人間の目にはときに無気味な姿や謎めいた形となって、さまざまに現れます。従って、例えば竜巻状や放射状や断層状に見えたとしても、それが地震前兆なのかどうかを疑う前に、低気圧が接近中だったり近くに存在していないか、前線はないか、気圧の谷が上空を通過していないか、高さによって風向が食い違っていないかなど、まず気象の面から十分に検証することが大切です。荒木健太郎さん(気象研究所)のなゐふるの記事FAQ 2-10もご覧下さい。(S、K)

補足1

一般の地震研究者が、雲と地震との関係はないと考える理由

  1. 地下の現象である地震と、大気中の現象である雲とを直接・間接に関連付けるメカニズムが考えられていないことです。地震雲を説明する際に、地震の前の岩石の微小破壊による電磁波の発生が用いられることがありますが、微小破壊で電磁波が発生することはありえるとしても、地下深くで発生した電磁波が 地表に伝わるしくみを十分に説明した学説はありません。さらに、地表に電磁波が伝わったとしても、その電磁波によって地震雲が生じるしくみを十分に説明した学説もありません。
  2. メカニズムが不明でも、「地震雲」の定義が明瞭で、一定の基準で認定された「地震雲」と大地震との対応例が多数報告されていれば、経験的あるいは統計的に「雲」を地震の前兆と捉えることが可能ですが、実際には、報告されている「地震雲」のほとんどは、その定義が補足2にも示すように不十分・不明瞭で統計的な検討が困難です。(N、K)

補足2

一般の気象研究者も「地震雲」には否定的です。その理由は、 報告されている「地震雲」のほとんどが、飛行機雲、あるいは、巻雲・巻積雲や層積雲の変異パターンとして (つまり、「通常の雲」として)説明可能だからです。
たとえば、「くものてびき-十種雲形について」(著者:湯山 生 (著)、 日本気象協会気象情報部)や「雲・空」(著者:田中 達也 (著)、山と渓谷社)という本に、(通常の気象条件で説明できる)種々の雲の形がのっており、その中には、過去に「地震雲」とされてきた雲に酷似した「普通の雲」が載っています。(S、K)

補足3

「飛行機雲は成層圏あたりの高層に出る。中層に現れるそれは地震雲である」という説もあるようですが、特に夕方などは太陽光線の具合による上層の雲のコントラストなどで、実際より低く見える場合が多くあります。首都圏では、羽田・成田・横田基地等の飛行場があるので、離着陸する多数の航空機があり、飛行機雲に出合いやすく、その分高度の見誤りの可能性も高まります。従って、首都圏は、地震雲とされる飛行機雲を発見する可能性の高い場所ともいえます。

3-2.「交差する筋上の雲が地震雲である」という説もあるようですが、当然のことながら飛行経路が交差すれば、飛行機雲が交差して「交差する筋上の雲」ができあがります。(S、K)

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