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2015年度

1. 受賞対象論文 :
    Short-term slow slip events along the Ryukyu trench, southwestern Japan, observed by continuous GNSS
・著者:Takuya Nishimura
・掲載誌:Progress in Earth and Planetary Science, 1:22, doi:10.1186/s40645-014-0022-5 (2014)
  受賞理由
     本論文は,GNSSによる地殻変動連続観測データに基づいて,四国西部から八重山諸島に至る琉球海溝沿いの短期的スロースリップイベント(SSE)の発生を系統的に調べたものである.
 従来,琉球海溝沿いでは,八重山諸島周辺を除いてSSEの発生が殆ど知られていなかったが,著者は,GNSS連続観測網の日座標値データに対して,自身の先行研究で開発した短期SSEの検出手法を適用することにより,1997年1月から2013年11月の期間で,モーメントマグニチュード5.6〜6.8の短期SSEの可能性が高いイベント130個,可能性のあるイベント93個を検出した.これらの短期SSEはプレート境界上の深さ10km〜60kmの範囲に不均質に分布しており,その再来周期,規模,深さ,関連する地震活動などの特徴が場所によって異なっている.さらに,SSEの発生分布が,琉球海溝における過去の巨大地震とは重複しないこと,沈み込むプレートの海底地形と関連が見られることも指摘された.このように,本研究は,観測点が存在しないために解析対象外とされた一部を除く琉球海溝のほぼ全域について,SSEの全体像を初めて明らかにした.琉球海溝のSSEは,場所によって異なる振る舞いをするだけでなく,喜界島のGNSS時系列で示されたように,同じ場所でも複雑に時間変化する場合もある.こうした現象は,同じような規模のイベントが一定間隔で繰り返す単純な地震サイクルの概念では説明できず,今後,複雑な振る舞いを再現可能な物理モデルの検討を通じて,プレートの沈み込み過程の理解が大いに進展すると期待される.
 本論文は,簡潔ながら要点を押さえた明瞭な書きぶりであり,各地域で検出されたSSEについても丁寧に議論がなされている.また,結果の図の表示にも工夫がなされており,琉球海溝におけるSSEの挙動の全体像が分かり易く示されている.
 本論文は,これまで未解明な点の多かった琉球海溝沿いのプレート沈み込み過程について新たな知見をもたらしたもので,地球科学的に大きな意義が認められる.また,琉球海溝における大地震の震源域,津波波源域の特徴に関する知見は地震・津波防災の観点からも重要である.さらに,世界の様々な地域におけるSSEの網羅的な検知の端緒となっており,国際的にも重要な影響を持つ研究である.  以上の理由より,本論文を平成27年度日本地震学会論文賞とする.

 
2. 受賞対象論文 :
    緊急地震速報のための同時多発地震を識別する震源推定手法
・著者:溜渕 功史, 山田 真澄, Stephen WU
・掲載誌:地震第2輯, 第67巻, 2号,41-55(2014)
  受賞理由
     緊急地震速報は,震源に近い観測点でP波を検知して直ちにその地震による各地の震度等を予測して可能な限り素早く市民に伝えるリアルタイム警報システムであり,身の安全の素早い確保のほか,列車の運転制御,工場でのシステム制御等,広範囲で活用されている.その緊急地震速報には,ほぼ同時刻に発生した複数の地震の短時間での分離が難しいという技術的問題があった.実際,2007年10月の一般向け緊急地震速報の運用開始から6年間に発表した138回の警報のうち,警報(最大震度5弱以上の予測)を発表したにもかかわらず最大震度が3未満であった事例は32回に上り,そのうち約8割(25回)は,複数の地震を分離できなかったことが誤報の要因であると報告されている.
 そこで本論文では,先見的な情報と物理量が異なる複数の観測値を統合的に扱えるベイズ推定を用いた震源のリアルタイム推定手法を開発した.解析処理において,振幅値やトリガされていない観測点情報を利用することにより,従来の緊急地震速報処理の迅速性を維持しつつ,より適切に同時多発地震を分離することが可能になった.この手法を2011年3月1日から4月30日および2013年8月8日に緊急地震速報が発表された72事例に適用すると,従来処理では22回あった誤報回数が0回になるなど,緊急地震速報の震源精度が大きく向上することが示された.
 論文の構成は分かりやすくまとめられており,現在用いられている手法や問題点,提案する手法,検証,それぞれにおいて非常に丁寧に述べられている.検証については,過去の実観測データを用いて詳細に行われており,単独地震,複数の事例だけでなく,地震とノイズが重なった事例においても適切に震源を推定できることを示している.また,開発した手法を用いてもなお残る誤差の原因についても非常に丁寧に分析されており,今後の更なる高精度化が期待される.
 特筆すべき点は,本手法は,従来の緊急地震速報処理と全く同じ観測値を入力として用いている点である.すなわち,既存の枠組みの範囲内で緊急地震速報の震源推定精度を大きく向上させることが可能である.このように,実用化を念頭に置いて研究開発が進められており,実運用への早期適用が期待される.地震学が社会に貢献する一つの事例として高く評価されるものである.
 以上の理由より,本論文を平成27年度日本地震学会論文賞とする.

 

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