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2015年度日本地震学会論文賞及び日本地震学会若手学術奨励賞受賞者の決定について

公益社団法人日本地震学会理事会

 日本地震学会論文賞および若手学術奨励賞の受賞者選考結果について報告します.
 2016年1月29日に応募を締切ったところ,論文賞6篇,若手学術奨励賞6名の推薦がありました.理事会において両賞の選考委員会を組織し,厳正なる審査の結果,2016年3月22日の第6回日本地震学会理事会において,下記のとおり論文賞2篇,若手学術奨励賞3名を決定しました.なお,若手学術奨励賞の授賞式は日本地球惑星科学連合2016年大会時に開催予定の定時社員総会に合わせて行い,論文賞の授賞式は2016年度秋季大会会場にて執り行う予定です.

〇論文賞
 1.・ 受賞対象論文 :
Short-term slow slip events along the Ryukyu trench, southwestern Japan, observed by continuous GNSS
 ・ 著者 : Takuya Nishimura
 ・ 掲載誌 : Progress in Earth and Planetary Science, 1 : 22, doi:10.1186/s40645-014-0022-5 (2014)
 ・ 受賞理由
 本論文は,GNSSによる地殻変動連続観測データに基づいて,四国西部から八重山諸島に至る琉球海溝沿いの短期的スロースリップイベント(SSE)の発生を系統的に調べたものである.
 従来,琉球海溝沿いでは,八重山諸島周辺を除いてSSEの発生が殆ど知られていなかったが,著者は,GNSS連続観測網の日座標値データに対して,自身の先行研究で開発した短期SSEの検出手法を適用することにより,1997年1月から2013年11月の期間で,モーメントマグニチュード5.6〜6.8の短期SSEの可能性が高いイベント130個,可能性のあるイベント93個を検出した.これらの短期SSEはプレート境界上の深さ10 km〜60 kmの範囲に不均質に分布しており,その再来周期,規模,深さ,関連する地震活動などの特徴が場所によって異なっている.さらに,SSEの発生分布が,琉球海溝における過去の巨大地震とは重複しないこと,沈み込むプレートの海底地形と関連が見られることも指摘された.このように本研究は,観測点が存在しないために解析対象外とされた一部を除く琉球海溝のほぼ全域について,SSEの全体像を初めて明らかにした.琉球海溝のSSEは,場所によって異なる振る舞いをするだけでなく,喜界島のGNSS時系列で示されたように,同じ場所でも複雑に時間変化する場合もある.こうした現象は,同じような規模のイベントが一定間隔で繰り返す単純な地震サイクルの概念では説明できず,今後,複雑な振る舞いを再現可能な物理モデルの検討を通じて,プレートの沈み込み過程の理解が大いに進展すると期待される.
 本論文は,簡潔ながら要点を押さえた明瞭な書きぶりであり,各地域で検出されたSSEについても丁寧に議論がなされている.また,結果の図の表示にも工夫がなされており,琉球海溝におけるSSEの挙動の全体像が分かり易く示されている.
 本論文は,これまで未解明な点の多かった琉球海溝沿いのプレート沈み込み過程について新たな知見をもたらしたもので,地球科学的に大きな意義が認められる.また,琉球海溝における大地震の震源域,津波波源域の特徴に関する知見は地震・津波防災の観点からも重要である.さらに,世界の様々な地域におけるSSEの網羅的な検知の端緒となっており,国際的にも重要な影響を持つ研究である.
 以上の理由より,本論文を平成27年度日本地震学会論文賞とする.

 2.・ 受賞対象論文 :
緊急地震速報のための同時多発地震を識別する震源推定手法
 ・ 著者 : 溜渕功史,山田真澄,Stephen WU
 ・ 掲載誌 : 地震第2輯,第67巻,2号,41-55(2014)
 ・ 受賞理由
 緊急地震速報は,震源に近い観測点でP波を検知して直ちにその地震による各地の震度等を予測して可能な限り素早く市民に伝えるリアルタイム警報システムであり,身の安全の素早い確保のほか,列車の運転制御,工場でのシステム制御等,広範囲で活用されている.その緊急地震速報には,ほぼ同時刻に発生した複数の地震の短時間での分離が難しいという技術的問題があった.実際,2007年10月の一般向け緊急地震速報の運用開始から6年間に発表した138回の警報のうち,警報(最大震度5弱以上の予測)を発表したにもかかわらず最大震度が3未満であった事例は32回に上り,そのうち約8割(25回)は,複数の地震を分離できなかったことが誤報の要因であると報告されている.
 そこで本論文では,先見的な情報と物理量が異なる複数の観測値を統合的に扱えるベイズ推定を用いた震源のリアルタイム推定手法を開発した.解析処理において,振幅値やトリガされていない観測点情報を利用することにより,従来の緊急地震速報処理の迅速性を維持しつつ,より適切に同時多発地震を分離することが可能になった.この手法を2011年3月1日から4月30日および2013年8月8日に緊急地震速報が発表された72事例に適用すると,従来処理では22回あった誤報回数が0回になるなど,緊急地震速報の震源精度が大きく向上することが示された.
 論文の構成は分かりやすくまとめられており,現在用いられている手法や問題点,提案する手法,検証,それぞれにおいて非常に丁寧に述べられている.検証については,過去の実観測データを用いて詳細に行われており,単独地震,複数の事例だけでなく,地震とノイズが重なった事例においても適切に震源を推定できることを示している.また,開発した手法を用いてもなお残る誤差の原因についても非常に丁寧に分析されており,今後の更なる高精度化が期待される.
 特筆すべき点は,本手法は,従来の緊急地震速報処理と全く同じ観測値を入力として用いている点である.すなわち,既存の枠組みの範囲内で緊急地震速報の震源推定精度を大きく向上させることが可能である.このように,実用化を念頭に置いて研究開発が進められており,実運用への早期適用が期待される.地震学が社会に貢献する一つの事例として高く評価されるものである.
 以上の理由より,本論文を平成27年度日本地震学会論文賞とする.

〇若手学術奨励賞
 1.・ 受賞者 : 澤崎 郁
 ・ 受賞対象研究 : 短周期地震波動論に基づく新たな地下構造および震源過程モニタリング手法の開発
 ・ 受賞理由 :
 受賞者は,地震現象の物理的理解の深化と災害軽減への貢献を大きな目標として,強震動による地盤の応答特性や地震断層からのエネルギー輻射過程,短周期地震波の伝播特性に関する研究に取り組んできた.その主な業績は以下の通りである.
 2000年鳥取県西部地震,2003年十勝沖地震やそれらの余震で得られたボアホールでの地表と地下の地震波形記録のスペクトル比を解析し,強震動の入力のよって引き起こされる地盤応答の変化を指摘し,地盤浅部の速度低下と回復過程を推定した.そして,強震動によって地盤浅部において速度低下が起こり,その後長期間を経て回復する過程を明らかにした.この研究は,地震後の地盤浅部の挙動の理解に大きな進展をもたらす先駆けとなった.さらに,地下構造変化を総合的に理解することを目指し,2011年東北地方太平洋沖地震等を対象に,P波・S波速度変化と異方性の同時解析,地殻変動記録に基づく速度変化量のモデリング,走時地震記録とデコンボルーション記録の同時解析,数値計算に基づく速度変化の深さ依存性の推定の研究など,観測・理論・計算を駆使して,独自の着眼による解析を次々と実施し地下構造モニタリングの新しい視点を提示した.
 受賞者はさらに,短周期地震波と輻射特性の解析手法を発展させ,本震から余震までを含めた短周期輻射エネルギー量を推定する手法の研究を行い,これにより,本震の断層破壊終盤から余震の始まりにかけての波動エネルギー輻射状況の把握が可能となった.この手法は,従来難しかった大地震直後からの余震活動推移の早期把握や予測に貢献すると期待される.
 このように,受賞者は短周期地震波の生成・伝播に関して,連続地震観測データ解析技術を広げるとともに,解析手法においても独自の視点で開発を進めてきている.これらの取り組みから大量の地震波形解析の可能性を広げるとともに,地下構造や震源過程のモニタリング研究分野の拡大や発展に重要な貢献してきた.
 以上の理由から受賞者の優れた業績を認め,その将来性を期待し,日本地震学会若手学術奨励賞を授賞する.

 2.・ 受賞者 : 三井雄太
 ・ 受賞対象研究 : 断層力学・モデリングに基づく震源過程の多面的研究
 ・ 受賞理由 :
 受賞者である三井雄太氏は,断層力学に基づく地震発生シミュレーションと地殻変動モデリングの両面から震源過程に関する多彩な研究を推進し,若手研究者としてこの分野の進展に大きく貢献してきた.
 まず,断層力学に基づく地震発生シミュレーションにおいて,受賞者は摩擦構成則に基づく力学的地震発生シミュレーションに関して多くの業績を上げている.特筆すべきは,地震時の摩擦発熱に伴う間隙流体圧の増大が引き起こす動的摩擦弱化の効果を,いち早く長期的地震サイクルのプロセスの中に組み込んで研究を行ったことであろう.この研究は,2011年の東北地方太平洋沖地震の浅部震源域における大規模断層運動を説明する有力なメカニズムとして大いに注目を集めたところである.更に,地震発生シミュレーションにおける各要素について,そのパラメータ依存性・モデルの固有の特性を明らかにし,より複雑で現実的な地震発生シミュレーションの基礎となる部分でも,大きな貢献をした.
 地殻変動モデリングにおいては,特に変動データの解析による震源過程の研究に功績を挙げた.例えば,大地震直後の断層延長部における余効すべり速度に関する定量的評価を行うとともに,そのすべり速度の本震規模依存性を,岩石実験に基づく動摩擦の速度依存性との関連性の中で議論した.更に,GNSSデータから,プレート境界の大地震においては,通常の余効すべりだけでなくプレート運動が加速する可能性を示唆した.
 上記に留まらず,受賞者は広範な分野において研究活動を行っていることも,評価すべき点と考える.例えば,GNSS観測網データを用いた地球自由振動の検出,岩石破壊に伴う発光現象の研究,地震後の津波到来による沿岸部の荷重変形の推定等が,これに該当するものである.
 以上述べたように,受賞者は,断層力学・モデリングに基づく震源過程の分野で,自らの主導によって業績を挙げ,この分野の研究の進展に貢献してきた.また,広い視野に立って,いくつもの研究分野で優れた研究を行っている.これらは,受賞者の研究の独創性と柔軟性を明瞭に示すものであり,今後の一層の活躍が期待される.よって,受賞者が日本地震学会若手学術奨励賞にふさわしいと判断し,本賞を授賞する.

 3.・ 受賞者 : 鈴木 亘
 ・ 受賞対象研究 : 被害地震の震源過程と広帯域地震波放射特性の解明
 ・ 受賞理由 :
 受賞者は,大地震時に観測される広帯域で複雑で多様な地震波の成因を解明することを目標として,断層面上の地震波放射特性の時空間分布とこれを支配する震源過程に関する研究に取り組んできた.その主な業績は以下の通りである.
 広帯域の震源過程を得るため,ウェーブレット変換を用いて異なる周期帯域の地震波形を統一的に取り扱う新たな逆解析手法を開発した.この手法を2000年鳥取県西部地震に適用し,一貫した解析手法によって広帯域震源像を明らかにした.そして,短周期地震波が主破壊の開始及び停止に伴って強く放射されたことを明らかにするなど,震源の物理を考える上で重要な知見を得た.
 海溝型巨大地震についても,放射地震波の周期特性の空間変化に注目した研究を行ってきた.海溝型地震の特性として放射地震波周期の深度依存性が以前から指摘されていたが,受賞者は,2011年東北地方太平洋沖地震の強震動波形の逆解析より,そのような深度依存性がそれまで知られていなかった長周期帯域でも見られることを明らかにした.また,2014年チリ北部の地震については,波形逆解析とバックプロジェクション解析を統一的条件で行い,断層深部のすべり域が短周期地震波を強く励起した可能性を示した.
 上記の他にも,地震被害を伴う数々の大地震について震源過程の解析を行い,震源過程と地震波放射に関する知見を提示してきた.2008年岩手・宮城内陸地震では,断層近傍でローカルに観測された大加速度フェイズが,観測点直下の大すべり域の破壊開始に伴って放射されたことを示した.2008年岩手県沿岸北部地震では,断層面形状の複雑さの影響が観測波形に現れていることを示した.これらの例は,断層面や震源過程の微視的な要素が一部の地域の地震動には大きな影響を与え得ることを示唆するものである.
 また,上述のような大地震の震源過程研究の経験を活かし,受賞者が所属する防災科学技術研究所において,強震観測網の整備・運用,被害地震の震源過程の迅速な公開,長周期地震動即時予測や津波即時予測に関する研究など,地震被害軽減に繋がる研究にも携わってきた.
 このように,受賞者は,大地震の広帯域震源過程の詳細に迫るため,解析手法の開発を行いながら多数の大地震の解析を行い,地震波形による震源過程解析の可能性と定量性を高めてきた.その研究成果は,震源の動力学特性や断層破壊メカニズムの解明に直結していることに加え,応用面では強震動予測における震源モデルの高度化に貢献している.
 以上の理由から,受賞者の優れた業績を認め,その将来性に期待し,日本地震学会学術奨励賞を授賞する.




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