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2005年度日本地震学会論文賞及び日本地震学会若手学術奨励賞受賞者の決定について

社団法人 日本地震学会理事会

 日本地震学会論文賞および若手学術奨励賞の受賞者選考結果について報告します.
 2006年1月31日に締切ったところ,論文賞9篇,若手学術奨励賞7名の推薦がありました.理事会において両賞の選考委員会を組織し(下記委員会構成を参照),厳正なる審査の結果,2006年3月28日の第6回理事会において,下記のとおり論文賞2篇,若手学術奨励賞3名を決定しました.なお,授賞式は,地球惑星科学連合2006年大会時に開催予定の通常総会に合わせて行います.

・論文賞選考委員会
 委員長 : 纐纈一起  委 員 : 松浦充宏,佐竹健治,趙 大鵬,浜田信生
・若手学術奨励賞選考委員会
 委員長 : 蓬田  清  委 員 : 川崎一朗,武村雅之,本多 了,山崎晴雄

○論文賞
1. 受賞対象論文 :
    Tidal triggering of earthquakes in Japan related to the regional tectonic stress, Sachiko Tanaka, Masakazu Ohtake, and Haruo Sato, Earth Planets Space, Vol. 56, No. 5, pp. 511−515, 2004
  受賞理由 :
     本論文は日本およびその周辺に発生した浅い微小地震活動と地球潮汐との関連を調べたものである.地震活動が活発な100あまりの領域について地震活動と地球潮汐の関係を統計的な手法を用いて調べ,13の領域で地球潮汐と地震活動の関連が有意であることを見いだした.さらにそれらの領域における地球潮汐による応力変化の軸方向が,その地域で発生した地震のメカニズム解から推定されるP軸の方向とほぼ一致することを確認している.
 地球潮汐と地震発生の関係は,これまで数多くの調査研究が行われてきているが,標本となる地震データの扱いや統計的な有為性の検証がむつかしく,ことの性質上,明快な結論を得ることが困難なテーマであった.しかしながら,著者達は本論文を含む一連の研究を通じて,地殻応力が臨界状態に近づいた状態では,地球潮汐による応力変化が地震発生に影響を及ぼし,臨界状態にない状態では影響が現れないことを,精度の良い均質なデータを用いて綿密な解析で明らかにし,地球潮汐が地震活動に与える影響についての理解を推し進めた.本論文で地球潮汐と地震発生の関連が見いだされた地域の中には,最近顕著な地震活動が発生した領域(安芸灘,宮城県沖)やその周辺域(十勝沖,新潟県中部,福岡県西方沖)が含まれている.このことは,地球潮汐と地震活動の関係を,各地域の応力の状態が大地震を引き起こす臨界状態に達しているかどうかを判断する材料として利用できる可能性を示しており,地球潮汐の地震発生に及ぼす重要性を示す研究成果として国外でも紹介されている.以上のことから本論文は,地球潮汐と地震活動の関係を明らかにする重要な論文として,平成17年度日本地震学会論文賞にふさわしい.

 
2. 受賞対象論文 :
     P波エンベロープ形状を用いた早期地震諸元推定法,束田進也・小高俊一・芦谷公稔・大竹和生・野坂大輔,地震第2輯,56巻,4号,pp. 351−361,2004
  受賞理由 :
     地震が発生した際にその地震の諸元をできるだけ短時間で推定することは,地震災害の軽減のために極めて重要である.その推定を初動からわずか数秒間のデータを用いて行う方法については,これまでにも研究が行われてきた.それらの研究では,地震波形の初動部の振幅や周期,あるいは振幅の傾きから地震の規模を算出することを目指してきた.しかし,警報を発すべき大規模地震の場合には,初動から数秒の時間内では破壊がまだ継続しており,規模の推定には大きな困難を抱えていた.
 この論文ではこれまでの方法とは異なり,まず震源までの距離を推定し,次に距離と最大振幅を用いて規模の推定を行う方法を提案した.著者らは,加速度記録のエンベロープ波形が,時間に関する比較的簡単な関数で近似できることを見出した.この関数の係数のひとつBは,マグニチュードがおよそ5以上で震央距離が約150km以内の場合には,震央距離と負の相関を持つことがわかった.著者らはこの関係を利用し,P波が観測点に到達してから数秒以内の波形を用いて決めた係数Bから震央距離を推定し,次いでその時間内の最大振幅と震央距離を基にマグニチュードを推定した.地震の規模が大きい場合,このようなマグニチュードの推定を時々刻々行うと,推定値は時間とともに大きくなることが期待される.従って,そのような現象が生じているかどうかが,警戒を要する地震か否かを判断する材料に使えることも示した.
 本論文で提案された方法は,早期地震検知・警報の立場からは利用価値が高いと考えられ,気象庁の緊急地震速報における基本的なアルゴリズムとして利用されている.また,その原理の地震学的背景を散乱理論に基づいて考察するなど,今後の地震学の研究動向にも影響を与える論文として,平成17年度日本地震学会論文賞にふさわしい.

○若手学術奨励賞
1. 受賞者 : 中原 恒
  受賞対象研究 : エンベロープ解析に基づく震源からの高周波エネルギー輻射
  受賞理由 :
     従来の震源過程の研究では,波形にフィルターをかけた後の比較的低周波領域の記録より,おおまかな時空間スケールでの断層運動を詳細に求めてきた.一方,実際に多くの構造物に影響を与えるのは1Hz以上の高周波領域の地震動であり,高周波の励起を知る事が重要である.しかし,複雑なサイト特性や伝搬途中の微細ランダム不均質性における散乱の効果により位相情報が乱されるために,従来の波形解析法では震源における高周波数領域での地震波励起の推定は困難である.一方で,エンベロープ記録を用いた波動エネルギーの伝搬を輻射伝達理論などに基づき,微細不均質性の研究が行われていた.候補者は,これらの研究に基づき,断層運動からの全波形エンベロープ形成のモデル化を行い,強震動エンベロープ記録を用いて断層面からの高周波エネルギー輻射量の分布を求める逆問題の手法を開発した.そして低周波領域での従来の波形解析と組み合わせ,1994年三陸はるか沖地震,1995年兵庫県南部地震,1998年岩手県内陸北部地震などの解析から,高周波の輻射領域は低周波のそれとは異なった断層面上にあるという震源の多様性を明らかにした.また,最近では,この高周波輻射についての強度分布や地域差などを検討している.候補者はこのように震源断層面上での高周波地震波動励起について独自の手法を開発し,震源過程と強震動予測との関係に新しい道を示した.これらの業績は本賞受賞に値するものである.今後もこのような新たな切り口を次々に開拓していくことを大いに期待したい.

 
2. 受賞者 : 上西幸司
  受賞対象研究 : 固体破壊の物理過程と断層運動との関係についての実験的・理論的研究
  受賞理由 :
     脆性固体の破壊実験で得られる伝搬速度は,理論的および実際の地震動記録から推定される断層の破壊速度よりもかなり遅く,観測と実験結果が矛盾していた.候補者は,この問題に対し,断層面などの不連続面の動的な破壊においては,破壊伝搬速度が従来の実験値より大きく,S波速度を越える状態まで加速されうることを,理論と実験の両面から示した.特に,self-healing pulseという動的すべりを伴う界面波を高速度カメラで初めて撮影する事に成功し,その結果と1995年兵庫県南部地震の断層破壊との関係を示し,その後の多くの実験的研究に影響を与えた.さらに,不連続面の力学的不安定に関しても新しい理論的な研究を行った.それは,線形摩擦すべり則が適用できる場合には,準静的なすべりから不安定な動的状態へ遷移する臨界条件が,外部の応力にはよらず,弾性定数とすべり弱化率のみによることを示したものである.この成果は,震源核や地震エネルギーの見積もりなど震源過程の未解決な問題への重要な手がかりを与えた.候補者は,工学系での研究の観点から,断層運動という地震学の現象に次第に注目していった.このように新しい視点から地震学の本質に関する研究を行ったことは非常に独創的であり,本賞受賞に値する業績である.候補者は今後も様々な破壊現象の理解を理論的・実験的に進めていくと思われるが,地震学会員の多くが関わっている断層運動の分野とより連携を深め,また国外のみならず国内の研究者とも共同研究を行い,独自の切り口で地震学一般の発展に寄与していただくよう期待したい.

 
3. 受賞者 : 関口春子
  受賞対象研究 : 強震記録を用いた震源過程の分析と強震動予測手法の開発
  受賞理由 :
     個々の地震についての震源過程の研究は,高密度高精度の各種観測網の発展とともに近年飛躍的に発展した.特に,大地震時においては比較的近距離に設置された強震動地震記録により,その詳細が明らかになってきた.特に,断層内における地震すべり分布や破壊伝搬様式を正確に求めることが最重要課題である.候補者は,断層すべりと破壊伝搬効果の分離やデータの信頼限界の定量化などに新しい視点で取り組み,すべりの時間発展と連続的な破壊伝搬の推定という点で信頼性の高い表現の震源モデル化の手法を確立した.具体的には,1995年兵庫県南部地震では地震動の粒子運動から地下の震源断層の位置を詳細に同定し,また阪神地域の盆地構造モデルと組み合わせて,帯状の強震動領域,いわゆる震災の帯を再現した.1999年トルコ・コジャエリ地震ではS波速度を越える破壊伝搬を確認し,2000年鳥取県西部地震では初期破壊と主破壊の明瞭な分離を示した.この他に,地震直後の震源モデルの公表にも初めて取り組み,強震動と被害状況の関係といった社会との関わりの面での貢献も大きい.さらに,最近では活断層情報を基に,想定地震について断層運動の動力学による不均質な震源モデルを提唱し,地盤構造モデルと組み合わせることで,定量的な強震動予測法を開発している.これらの業績は,次世代の強震動予測手法の基礎となるものであり,従来の地震学のみならず,地震工学や耐震・防災工学・地質地形学の分野にも広く影響を与えるものとして,高く評価され,本賞受賞に値する.今後は,既存の手法・方法の発展のみならず,自分の新しいアイデアを全面的に出した研究に挑戦することを期待したい.


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