「強震観測の最新情報」連載にあたって(日本地震学会ニュースレター, Vol. 9, No. 5, p.7, 1998年1月)Publications

強震動委員会委員長: 入倉孝次郎
強震動委員会調査班1:久田嘉章(班長)、工藤一嘉、横井俊明、青井 真


 兵庫県南部地震の後、多くの機関によって強震観測事業が進められ、膨大な数の強震計が設置されています。強震観測の目的は、地震学的研究から防災・耐震工学まで幅広い分野に及ぶため、事業を行う機関も国や地方公共団体などの公的機関から大学や民間企業まで非常に数多くの機関が携わっています。そのため各種事業間で連絡をとり、その全体像を掴み、調整をとることは容易ではありません。最近、強震観測の現状を調査する目的で、科学技術庁によりアンケート調査が行われました。それによれば1997年2月の時点で、全国でデジタル強震計が5117台、アナログ強震計が738台設置されております。しかし観測点によっては、せっかく高性能な強震計を用いながら波形データを記録せず、震度情報しか残さないなどの問題があり、今後改善すべき課題も見受けられます。
 一方、強震観測において危惧されるのは、兵庫県南部地震から時を経るに従って、強震観測への社会的な関心が低くなり始めていることです。強震観測の最も重要な目的は、数十年から数百年に一回あるかどうかの地震動記録を捉えることです。もちろん強震計で捉えた頻度の高い弱震動の波形データを収集し、流通することも、地域による地震動特性の違いを明らかにしたり、震源や伝播媒質に関する情報を得る、など有効に利用することはできます。しかし地震動は非線形な現象であるため、第一義に重要なのは強震時の地震動特性の解明なのです。このような事情が広く社会的に認知されなければ、せっかく地震後に盛り上がったきた様々な強震観測事業の維持管理も、今後は困難に直面するかもしれません。採られた貴重なデータがいかに有効に利用されて、強震観測の重要性が広く社会的に認知されるかどうか、が問われていると言えます。
 以上のことを鑑み、強震動委員会では、その結成当初から様々な機関、特に公的な機関によって行われている強震観測事業の情報収集を行っており、どのようにして学会員に情報提供できるか議論を重ねてきました。その結果、まず第一歩として各観測事業の紹介記事をニュースレターに連載するのが妥当であろう、という結論に達しました。従って本連載は、様々な強震観測事業に関係する第一線の研究者や担当者の方々に、事業概要を中心とする紹介記事を書いて頂き、強震観測の重要性をプロモートすると同時に強震観測の全体像を掴み、今後の強震観測に向けて提言を行うことを目的としています。現在のところ、強震観測に深く関わる以下の機関における観測事業を紹介して頂く予定です。
 

 


なお、著者らの調査不足により、上記機関以外での重要な強震観測事業が抜けていれば、ぜひ連絡をお願いする次第です。本連載が、一人でも多くの方々に強震観測を理解して、その重要性を認識して頂く一助になるよう願っております。
 

 


参考文献:
工藤一嘉(1994):強震観測-現状と展望-、地震、第47巻、pp.225-237
翠川三郎(1996):最近の強震計ネットワークについて-阪神大震災以降の動向-、建築防災、12月号、pp.12-16
科学技術庁研究開発局地震調査研究課(1997):強震計の現状調査及び強震計データ流通に関する調査
 

 

(連絡先:久田嘉章、工学院大学建築学科、電話:03-3342-1211、 E-Mail:hisada@cc.kogakuin.ac.jp

ページ最上部へ