第2回 気象庁における強震波形観測・収録と提供(Vol.9, No.6, 7-9, 1998/3)Publications

川上 徹人(気象庁地震火山部地震津波監視課)

はじめに

現在、気象庁におけるディジタル強震波形観測・収録業務は、95型震度計によって行っている。95型震度計は、20kmを基本とした全国メッシュのうち約600箇所(気象官署約150箇所、都市部約130箇所、郡部約140箇所、津波地震早期検知網の観測点約160箇所、機動観測点約20箇所)に整備されている。地震観測を目的とした津波地震早期検知網観測点の多くは人工ノイズの少ない郊外に設置されているが、その他の観測点は人口の多い市街地近辺に設けられている。

強震観測機器と収集システム

(1)87型電磁式強震計
気象庁におけるディジタル強震波形観測・収録業務は、気象官署の機械式強震計を87型電磁式強震計へ更新することにより、1988年に開始された。87型電磁式強震計は全国の気象官署のうち約80箇所に整備され、その後に整備・強化された震度計との比較・評価を経て、1997年3月末に運用終了となった。
87型電磁式強震計の諸元は、以下のとおり。
 観測成分:NS,EW,UD
 測定範囲:±1G(cut off:0.1、10Hz)
 データ:50Hz、16bit
 収録基準:トリガ(加速度、外部)
 収録時間:不定(トリガ下限値に下がるまで)
 収録媒体:FD

(2)95型震度計
87型電磁式強震計以外に、ディジタル波形収録機能を持った機器としては、震度計がある。1991年に展開を開始した90型震度計は波形収録機能を有していなかったが、1994年に展開を開始した93型震度計はディジタル波形収録機能を持っており、87型電磁式強震計と同等のスペックでICメモリカードにデータ収録を行った。
その後、「平成7年(1995年)兵庫県南部地震」を契機として、平成7年度に気象官署及び津波地震早期検知網の既設震度計の機能強化を図り、都市部及び郡部には震度計を新設することとなった。これらの震度計は、強震波形観測及び収録機能に関しては全く同等の性能を有しており、95型震度計と呼ばれる。
95型震度計による暫定的な波形データ収集は1996年10月に開始し、本格的な収集業務は1997年4月に開始した。
95型震度計の諸元は、以下のとおり。
 観測成分:NS,EW,UD
 測定範囲:±2048gal(DC~41Hz)
 データ:100Hz、24bit
 収録基準:トリガ(加速度、速度)
      計測震度 0.5以上
 収録時間:1分単位
 収録媒体:ICメモリカード

強震観測機器と収集システム

(3)波形収集システムと収集基準
震度計の波形データは、気象庁本庁、札幌・仙台・大阪・福岡管区気象台、沖縄気象台の何れかの中枢官署に集められ、最終的に気象庁本庁へ集約される。(図-1を参照)
気象官署の震度計は、一部を除いて専用線で中枢局装置と結ばれている。(専用線でないところは、公衆回線を使用。)都市部と郡部の観測点に置かれた震度計は、すべて公衆回線により中枢局装置と結ばれている。
現在の基準では、気象庁の何れかの観測点で最大震度4以上を観測した場合に震度3以上の観測点の波形データを概ね24時間内に自動収集することとしている。収集対象となるイベントについて、中枢局装置から該当する震度計に対して波形要求コマンドを送ると、各震度計からデータを送信してくる方式となっている。(特定の観測点に対し、マニュアル操作によりデータ収集することも可能である。)
なお、津波地震早期検知網の観測点からは、20Hzサンプリングの連続加速度波形をテレメータしているため、通常の波形収集対象から除外している。100Hzサンプリングのデータが必要と認めた際は、現地に赴きICメモリカードを交換する形でデータ収集を行う。

データの提供

波形データの提供は、(財)気象業務支援センターを通じて行っている。

(1)87型電磁式強震計
1995年分までは、MTによりデータ提供している。(データは、バイナリ形式。)
1996年1月から1997年3月までのデータについては、従来と同じフォーマットでCD-Rに書き込んだものを提供している。(1995年以前のデータについても順次メディア変換を行う予定である。)

(2)95型震度計
1997年3月26日の鹿児島県薩摩地方の地震などでは、震度4以上となった観測点のデータをFDで臨時提供している。
1997年4月以降は、データを追加する方式により、3ヶ月毎にCD-Rに書き込んだものを提供している。(第1回:1997年4月~6月分、第2回:1996年10月~1997年9月分。第3回は、1996年10月~1997年12月分を予定。)今後は原則として1枚/年でCD-Rを作成することとしているが、3ヶ月毎に暫定的な提供を行う計画である。
95型震度計になってからサンプリング周波数と1サンプルのデータ長が変わり、波形データの収集方式も変更されたため、データの提供フォーマットも新しいものにした。(差分方式を採用し、差分値は16進数表現されたものを文字型で記録している。パソコン等によるデータ読み込みを考慮した。)

終わりに

気象庁の震度計は、その地域の標準的な地表面の地震動(震度及び強震波形)を観測することを目的として、同一の観測・収録性能を有したものを同一設置条件となるように整備した。(性能面の確認は、震度計全数を検定することによって行った。また観測点の場所については、特異な環境となっていないか、ノイズレベルが高すぎないか等を検討して決定した。さらに、震度計台及び観測局舎の規格統一することにより、設置条件が同一となるように配慮した。局舎を設けない場合は、可能な限り付近の構造物等の影響を受けないように配慮した。)
また、毎日の動作確認と定期的なメインテナンスを行うことにより、震度計の基本性能を維持しいる。その結果、地震発生時には震度を迅速に通報するとともに、強震波形を確実に現地収録することを可能にしている。(財)気象業務支援センターの連絡先は、以下のとおりである。

(財)気象業務支援センター 振興部オフライン・データ担当
 〒101-0054
 東京都千代田区神田錦町3-17 東ネンビル
 TEL:03-5281-0440 FAX:03-5281-0443

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