第19回 コロンビアにおける国立強震観測ネットワークの7年間【日本語訳】(Vol.12, No.5, 13-16, 2001/1)Publications

コロンビアにおける国立強震観測ネットワークの7年間

ネルソン E. プリード H(理化学研究所 地震防災フロンティア研究センター)

(a) Distribution of stations of the strong motion network of Colombia (b) Seismic Activity of Colombia from 93 to 97 recorded by the Seismic National Network of Colombia operated by INGEOMINAS.

Figure 1. (a) Distribution of stations of the strong motion network of Colombia (INGEOMINAS). (b) Seismic Activity of Colombia from 93 to 97 recorded by the Seismic National Network of Colombia operated by INGEOMINAS.

歴史

コロンビアにおける始めての強震計の導入と観測は1950年頃にイエズス会によって行われた。その僅か四半世紀後にはStrong Motion Network of Colombiaが、コロンビア地質調査所(INGEOMINAS)により設置と運営を開始した。ネットワークは120のデジタル加速度計で構成され、主にColombian Andean地域に集中している。中でも首都であるBogot_では30の加速度計がおかれている(図1a)。Colombian Andean地域に多くの強震計が設置されている理由は、コロンビアで最も地震活動が活発なためである。この地域にコロンビアの多くの活断層が集中し、地震危険度も中程度から高い地域に分類されている。一方、残りの地域、特にコロンビアの南東地域(Amazon plane)は、顕著な地震活動は存在しない(図2b)。

ネットワークは2つのフェーズで計画された。第1のフェーズでは1993年から2年間で35の観測点が、Canadian International Development Agency(CIDA)と国連の援助により、第2のフェーズでは次の2年間で55の観測点が、National Agency for Disaster Preventionを通したコロンビア政府による援助を受け、それぞれ設置された。殆どの援助基金は強震計の購入に当てられた。一方、約半数の観測小屋を建設するための援助がINGEOMINASと地方自治体との間で合意に達している。その他の様々な機関、例えば幾つかの水力発電プロジェクト、セメント業界、開発のための地方局なども、それぞれの持つ強震計の維持運営をINGEOMINASが行うことで、強震計ネットワークに参加している。

90の強震計からなる元々の国立ネットワークに加え、1997にコロンビアの首都であるBogot_に30の強震計からなるローカルなネットワークが設置された。このネットワークはDisaster Prevention city office(DPAE)の援助でINGEOMINASにより運営されている。

Figure 2. Typical output of the Strong Motion Catalog published by INGEOMINAS. The waveforms correspond to the 1999 Quindio earthquake recorded in a rock site station.
Figure 2. Typical output of the Strong Motion Catalog published by INGEOMINAS. The waveforms correspond to the 1999 Quindio earthquake recorded in a rock site station.

強震計の設置

国とボゴタのネットワークは全てKinemetrics社製のデジタル加速度計で、解像度は12から19ビットと様々である。Bogot_の2点とTumaco市の1点のボアホールを除いて、強震計は全てフリーフィールドに置かれている。ボアホールは200m地下の1点と地表の1点で各3成分、計6個のセンサーで構成されている。強震計は大きな地震後の余震観測にも利用されている。約半数の観測点は岩盤サイトに置かれている。

ネットワークの目的

ネットワークの主な目的は、コロンビアにおける主な地震活動域における強震観測、震源モデルの構築や距離減衰などの研究、強震動カタログの作成、余震観測などである。

データの記録

観測を開始して以来、様々なマグニチュードの約70の地震から900以上もの強震動を記録している。全記録は処理され、データベースとして保存され、カタログとして毎年、出版されている。カタログは全記録の加速度、速度、変位波形、及び加速度応答スペクトルから成る。1例を図2に示す。

今後の予定

今後、国立強震観測ネットワークのプロジェクトとして、全観測点のP波・S波速度を測定し、サイト特性を調べる予定である。またインターネットによるデータベースへのアクセスと、カタログ使用を可能にするプロジェクトも現在進行中である。

なお、強震ネットワークへは
http://www.ingeominas.gov.co/red/red_de_acelografos/red_de_acelerografos.htm
からアクセス可能である。

(日本語訳:工学院大学 久田 嘉章)

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