第23回 港湾地域強震観測のデータのウェブ上での公開(Vol.14, No.1, 6-8, 2002/3)Publications

野津 厚(独立行政法人港湾空港技術研究所)

1.はじめに

港湾地域強震観測の現状については以前にもこのコーナーで紹介した1)。その際、インターネット等によるデータ提供を検討中であることも紹介した。このほど、ウェブサイトの構築が一応終了して、データの公開を開始できる運びとなった。URLアドレスはwww.eq.ysk.nilim.go.jpである。

図1 ウェブサイトのトップページ
図1 ウェブサイトのトップページ

図2 記録検索画面
図2 記録検索画面

図3 ダウンロード画面
図3 ダウンロード画面

図4 地点情報画面
図4 地点情報画面

2.港湾地域強震観測をめぐる状況の変化

まず、前報1)以降の港湾地域強震観測をめぐる状況の変化について簡単に紹介する。公的機関の組織再編に伴い、港湾地域強震観測の参画機関の名称も大幅に変更となった。現在の参画機関を列挙すると次の通りである。

国土交通省港湾局/北海道開発局/東北地方整備局/関東地方整備局/北陸地方整備局/中部地方整備局/近畿地方整備局/中国地方整備局/四国地方整備局/九州地方整備局/内閣府沖縄総合事務局/東京都港湾局/静岡県港湾総室/大阪市港湾局/宮崎県港湾課/国土技術政策総合研究所/独立行政法人港湾空港技術研究所

このうち独立行政法人港湾空港技術研究所は電話回線によるデータの収集と保管、計器補正、強震観測年報の刊行などを、旧運輸省港湾技術研究所から引き継いで実施している。国土技術政策総合研究所はデータ提供の窓口としてウェブサイトの運営を担当する。

3.ウェブサイトの概要

今回構築したウェブサイトには、1960年代から今日に至るまでの加速度時刻歴波形がすべて収められている。1968年十勝沖地震の記録から2001年芸予地震の記録まで、すべてにアクセス可能である。図1はウェブサイトのトップページである。「記録検索」「地点情報」「計器特性」「数字化と補正」などのメニューが用意されている。

図2は記録検索画面である。港湾、観測地点、検索期間、震源緯度、震源経度、震源深さ、マグニチュード、最大加速度、PSI値、震央距離、地震名のいずれか、またはそれらの組み合わせを指定することにより、該当する記録を検索することができる。なお、PSI値は速度の自乗の時間積分の平方根として定義される量で、ケーソン式岸壁の被災程度と良い相関があると報告されている 2)。図2では港湾として「境港」、観測地点として「境港-G」、検索期間として「2000年10月~2000年11月」、最大加速度として「40Gal~400Gal」を指定した場合の検索結果を示している。

同じ画面で右にスクロールしていくと、記録(波形)データのダウンロードという項目があらわれる(図3)。ここでは「オリジナル」「補正」「SMAC相当」の3つのボタンがあり、クリックするとそれぞれの波形を自己解凍ファイルとしてダウンロードできる。これを解凍するとCSV形式のデジタルデータが得られる。数値の単位はGal、サンプリング周波数は100Hzに統一されている。ここにオリジナル加速度波形とは、アナログ式強震計の場合、数字化後に計器特性補正以外の補正をすませた波形、デジタル式強震計の場合、ゼロ線補正のみを行った波形のことである。補正加速度波形とは、計器特性に関する補正を行った上で、SN比の十分でない低周波成分をハイパスフィルタにより削除した波形、SMAC-B2相当波形とは、SMAC-B2型強震計による記録と比較可能なように周波数成分を調整した波形である。それらの波形を求めた際の詳しい手順については同じウェブサイトの「数字化と補正」のところを参照されたい。

強震計設置地点の地盤条件等は「地点情報」のページで見ることができる。例えば図4は宮崎港の強震観測地点における地点情報の例である。観測地点の所在地や緯度・経度、N値、弾性波速度、密度などの情報にアクセスできる。

4.データ利用に際してのお願い

港湾地域強震観測のデータは港湾関係諸機関の共同の成果ですから、論文等では港湾地域強震観測のデータであることを明記していただくようお願いします。○○研究所のデータといった表現はあまり正確ではありませんのでよろしくお願いいたします。

参考文献

1)一井 康二:港湾および空港における強震観測,日本地震学会ニュースレター,Vo.10,No.4,1998.11
2)野津 厚,井合 進:岸壁の即時被害推定に用いる地震動指標に関する一考察,第28回土木学会関東支部技術研究発表会講演概要集,pp.18-19,2001.3

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