第11回 地震研究所の強震観測(Vol.11, No.3, 16-18,1998/9)Publications

工藤 一嘉・纐纈 一起・高橋 正義・坂上 実(東京大学地震研究所)

 東京大学地震研究所では、駿河湾・伊豆半島から南関東にかけて強震観測網を展開しており、その地域に含まれる足柄平野と伊東市周辺では、高密度の観測を行っています。

1.観測網の概要

図1 南関東・伊豆半島・駿河湾における観測点配置
図1 南関東・伊豆半島・駿河湾における観測点配置

 駿河湾・伊豆半島地域の強震観測網は1983年に設置されましたが、新設にあたっては、東海地方での大規模地震の発生が指摘されたこと、1978年にIAEE、UNESCO等の主催で強震アレイ観測に関する国際ワークショップが開催され、新しい(望ましい)観測・体制への提言 [IWAN(1978)]などが原動力になっています。設置当初は15地点から成る現地収録のみの観測でしたが、1994年に電話回線によるデータ伝送のシステムに更新され、また地震地殻変動観測センターとの協力で地中観測井(油壷、国府津、伊東、相良)、観測壕内(鋸山)が追加されました。さらに近年では、リアルタイム地震学や新地震予知計画のプロジェクトにより、伊東市周辺や川崎市などに観測点を新設しており、現在では図1に示すような南関東から駿河湾岸までをカバーする配置になっています。なお、新設点はまだ地図上にプロットしていない点もあります。使用している強震計はSMAD-3M、SMAC-MD、K-NET95 (いずれも(株)アカシ製)等です。駿河湾・伊豆半島の各観測地点は、地域を代表する露岩上に設置され、震源の情報が可能な限り乱されることなく入手されることを意図しており、また基準観測点的役割を有しているとも考えられます。

 強震動がサイトの影響を強く受け、わずかしか離れていない2地点で震度2程度違うことは古くから指摘されてきましたが、系統的な強震観測に基づく検討はあまり行われておりません。足柄平野の観測網は、岩盤から軟弱な堆積層までの地質(地盤の強度)が異なる地点での観測を通じて定量的評価につなげることを目的としております。観測網が計画・実施にこぎつけた時期を同じくして、IASPEIとIAEEが共同でワーキンググループを結成し、上記の問題に取り組むことになりました。その関係で、足柄平野は国際的なテストサイトとして位置づけれれています。観測を開始してまもなく、箱根付近の地震(1990年8月5日、M5.1)の記録が得られ、上記ワーキンググループの活動としてブラインドプレディクション(観測データを伏せておいて、地震動を予測する)が行なわれました(ESG1992)。1997年度にはリアルタイム地震学の分担課題を担うことを目的として、準リアルタイム機能を持つ機器(K-NET95にトリガーと同時にデータを伝送する機能を付加)に更新しました観測点は平野部を取り囲むように露岩上に6地点と平野内の堆積層上には9地点のフリーフィールドの観測を行っています(図1左上)。また、観測時期はさまざまですが、やや長期的な臨時観測点として建物基部でほぼ10ヶ所程度の観測も行っています。臨時的観測点は現地収録が中心です。平野の中央部で2ヶ所、西部では2ヶ所の地中の観測が実施されていますが、中でもCTS観測点では地表、-10m、-30m、-100m、-467mのアレー観測が行われています(使用計器はAJE8200:1998年以降)。

 また、リアルタイム地震学や新しい地震予知計画では震源過程や強震動生成メカニズムの解明をめざした強震観測が重視されるようになっており、比較的データの蓄積が速いことが期待される伊東沖の群発地震地域で、活動域を囲むような高密度強震観測網を展開しつつあります(図1右下)。たとえば、この群発地震域の直上には手石島と呼ばれる無人島があり、昨年度からはここで太陽電池や携帯電話を利用した強震観測を開始しました。

 以上の観測のほか、他大学等との共同観測と歴史的継続のSMAC型強震計による建物の観測(主として大阪、名古屋)も行っているが、全ての強震計設置点総数は84地点(多成分、建物を1とする)に達する。

2.データ収集

準リアルタイムデータ伝送

図2 準リアルタイムデータ収集システム
図2 準リアルタイムデータ収集システム

 強震観測あるいは震度観測にも電話回線によるデータ収集、保守管理などが急速に普及しました。強震観測は一般にイベントトリガー方式であり、観測点でのファイル化が終了した後に、一般公衆電話回線を利用してデータ伝送されるシステムが一般的です。しかし、大地震が発生して被害を受ける激震地では、電話回線が使えなくなり、データの回収が困難になることが予想されます。そのため、イベントをトリガーした直後に観測点から本局に電話をかけ、通話状態になると同時に準リアルタイム的に波形データを伝送するシステムの導入を試みました。データは遅延回路を通過するため、各観測点での遅延時間(現状は15-20秒)だけ遅れて取得されるため、準リアルタイムと称しています。伝送されたデータは地震研究所のPC(本局)デイスプレイに波形を表示し、収録後ただちに他の観測点のデータ回収に移行します。本局には現在4デジタル(ISDN)、4アナログ回線の受付けが可能ですが、準リアルタイム伝送はデジタル回線に限られるので、4観測点からの同時受信が可能です。概念図を図2に示します。ようやく順調に動き出しましたが、まだまだテスト段階と言えなくもありません。今後の開発計画として、準リアルタイムデータによる第1次の速報 (地震後数分以内)、多くの観測点データ回収後の第2次速報(1―2時間後)など、段階的な観測情報を用意し関連研究機関、地震防災機関へのデータ提供を考えております。

データの利用

 相当数の観測点がトリガーしたやや顕著な地震についてはftpサイトから入手できるようにしておりましたが、半自動的にデータ収集が可能になりつつありますので、速やかに利用できるようにホームページでの公開を準備しています。防災科学技術研究所のk-netが全国をカバーし、利用者の便宜を考え、K-NETと同じフォーマットでダウンロードできるようにしてあります。
 1999年7月25日山梨・神奈川県境の地震(M3.4)から掲載しております。古いデータはフォーマット変換などの作業のため、徐々に追加される予定です。完成品とは言えませんが、ホームページ
http://kyoshin.eri.u-tokyo.ac.jp/SMAD/
をご覧ください。
 このホームページは大学院の学生諸君(神野達夫、中村洋光、小野若菜、 Athanasios Makris)の協力によって作成されたものです。

問い合わせ先

〒113-0032 東京都文京区弥生1-1-1
東京大学地震研究所 工藤 一嘉・纐纈 一起・高橋 正義・坂上 実
E-mail: kudo@eri.u-tokyo.ac.jp, k2@shiro.eri.u-tokyo.ac.jptaka-m@eri.u-tokyo.ac.jp, sakaue@eri.u-tokyo.ac.jp

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