日本の地震予知・予測研究の歴史(1962年のブループリント以降)Publications


地震学を社会に伝える連絡会議 (2014年9月)

このページは,公益社団法人日本地震学会会員を対象として,会員が日本の地震予知・予測研究に関する理解を深めるために 国による地震予知研究計画を中心とした歴史を紹介するものです. 旧地震予知検討委員会が作成しました.極力主観を排して,事実だけを述べるように努めました.また,必要に応じて両論併記しました. 追加・修正点があれば,具体的な理由や文案と共に「地震学を社会に伝える連絡会議」までお寄せください. 会員から頂いた追加・修正案も踏まえながら,本ページは適宜更新していく予定です.

なお,リンクで*のついているものは,旧地震予知検討委員会でとりまとめたものです.

過去の地震予知研究計画

1962年: 「地震予知―現状とその推進計画」(地震研究者有志),通称:地震予知のブループリント

地震予知の実現可能性を明らかにするためにはどの程度の観測研究が必要であるかを,当時の科学技術の水準で実現可能な計画として提案したもの.
内容
・地震観測網や地殻変動観測網の全国展開
・地震波速度変化や電磁気現象に関する観測も提案.

参考文献
公益社団法人日本地震学会2012年秋季大会特別シンポジウム実行委員会編, (2013), 「ブループリント」50周年地震研究の歩みと今後, 日本地震学会モノグラフ,2.

1965年~1998年:第1次~第7次地震予知計画(第1次のみ「地震予知研究計画」)

概要
・地震に先行する現象の把握と解明による直前予知が最終的な目的
・地震や地殻変動などの観測によって地震が発生する可能性の高い場所を特定し, そのような場所に観測網を集中し,前兆現象を捉えて地震予知につなげようとする戦略
・地震観測網の設置や測地測量の実施から始まり,地殻変動,電磁気,地下水やガスなどの連続観測を行い,前兆現象の把握を目指した研究が行われていた.
・最も有力な前兆現象
1978年1月14日に発生した伊豆大島近海地震(M7.0)に先行するいくつかの異常
・伊豆大島沖では本震の前に群発地震が活発化
・伊豆半島では,地下水位,地下水温や地下水中のラドンガスの濃度が変化.体積歪にも変化.複数の独立な現象が地震前に生じた
→信頼性大とされた.しかし,その後,これ以外の有力な前兆現象は見つからず.
・同計画は1995年兵庫県南部地震による阪神・淡路大震災をきっかけに見直し.
・第1次~第7次地震予知計画の構成の推移はこちら
・以下の第1~第7次計画とレビューについてのリンク先のpdfファイルは印刷物から文字起こしをしたものである. 特に第1~4次計画については,読み取れない部分があり,その部分は「」で示してある.また,読み取れない所を想像で書き込んだ部分については赤字で示した.

第1次計画(1965-1968年)

内容と主な出来事
・ブループリントで提案された地震予知研究を推進するための体制作りを目指した.
・三角測量や水準測量による地殻変動調査,検潮場の整備,地殻変動の連続観測,地震観測,地震波速度の観測,活断層調査,地磁気・地電流の調査などが実施.
・大学での講座・部門の増設や観測網の整備.

参考文献
日本学術会議地球物理学研究連絡委員会地震予知小委員会,文部省特定研究災害科学総合研究班地震予知分科会(1968), 地震予知研究シンポジウム論文集.

第2次計画(1969-1973年)

内容と主な出来事
・測量や地殻変動連続観測による地殻変動の把握,地震観測による地震活動の把握など.
・1969年に地震予知連絡会設置(注1).地震予知連絡会では,重点的に観測研究を行 う地域として「特定観測地域」及び「観測強化地域」を指定.
・大学には「観測センター」が設置され,地域を分担して日本全国の観測研究を行う体制ができた.
・研究項目として,首都圏の深井戸観測や岩石破壊実験が加わる.

参考文献
日本学術会議地震学研究連絡委員会・地震学会 (1973), 地震予知研究シンポジウム論文集.

第3次計画:以下の2度の見直し含む(1974-1979年)

内容と主な出来事
・第2次計画で展開された観測計画のさらなる推進と,日々増大しつつあるデータの処理の強化.
・伊豆半島周辺の地震活動や南関東での異常地殻変動の検出,中国で海城地震 (1975年2月,M7.3)の予知が成功したと伝えられたことをきっかけとして,2度にわたって計画が見直された.第3次計画見直し(1975)
内容と主な出来事
・従来の観測研究のなかでも特に推進すべきもの:海底地震観測・地殻応力測定の開発研究
・新たに推進すべきもの :地震発生過程の理論的観測的研究・ 地下水に関する研究*・電気比抵抗変化等 に関する研究・重力変化の精密測定等
・地震予知モデルとしてのダイレイタンシー水拡散モデル*.第3次計画の再見直し(1976):1976年に発表された東海地震説を受けたもの.
内容と主な出来事
・業務観測体制の更なる整備拡充.
・長期的地震予知と短期的地震予知という概念の提案とそれぞれに必要な観測体制の提示.
・短期的地震予知のための気象庁を中心とした常時観測体制の整備
東海地域における短期的地震予知のための判断に対応で きる組織が必要
→1977年4月に地震予知連絡会に東海地域判定会が設置→同判定会は後に気象庁へ移された(後述).
・異常が観測された地域における機動的な観測体制の整備.
・1978年には大規模地震対策特別措置法(注2)が施行.
・1978年1月に伊豆大島近海地震(M7.0)が発生→顕著な前震,ラドン濃度,地下水位,地殻変動連続観測に地震前の異常がとらえられた.

参考文献
日本学術会議地震学研究連絡委員会・地震学会 (1976), 地震予知研究シンポジウム論文集.

第4次計画:計画途中にレビュー有り(1979-1983年)

内容と主な出来事
・長期的予知および短期的予知が研究の中心に.
・長期的予知とは「場所」と 「規模」を知るための観測研究とされた.
従来の測地観測,地震観測,地磁気観測,地震波速度変化の観測研究など.
・短期的予知は主に「時期」を知るための観測研究としされた.
高密度で短期間の繰り返し測量,地殻変動連続観測,地震観測,地球電磁気観測,地下水観測等.
・基礎的研究
岩石破壊実験,地殻応力測定,地殻構造探査なども重要視.
・地震予知連絡会にあった東海地域判定会は,気象庁に設置された「地震防災対策強化地域判定会」に役割を譲る(注3).

参考文献
日本学術会議地震学研究連絡委員会・地震学会,1980,地震予知研究シンポジウム論文集.
萩原尊禮,1982,地震学100年,東京大学出版会,233pp.

第5次計画:計画途中にレビュー有り(1984-1988年)

内容と主な出来事
・「長期的予知」と「短期的予知」を中心とした観測研究の継承.
・長期的予知
全国を対象とした比較的基盤的な観測と,特定の地域を対象とした集中的で研究的な観測に区分.
・短期的予知
1978年の伊豆大島近海地震の前に現れた変化を地震の前兆とみなし,それ以外にもいくつか前兆と考えられる変化を捉えた.
他方,地震波速度変化の測定は,変化が検出されなかったとして中止.
・観測技術に VLBIが導入
・活断層調査などにより内陸地震の繰り返しに関する知識が増大.
・ギリシャにおいて,アテネ大学の物理学者Varotsos・Alexopoulos・Nomikosによって提案された地球電磁気学的手法による地震予知(VAN法)の成功が伝えられる. 地球電磁気学的手法による地震予知研究*が改めて注目さ れるよ うになる.

参考文献
日本学術会議地震学研究連絡委員会・地震学会 (1987), 地震予知研究シンポジウム論文集.
Mogi, K. (1986), Recent Earthquake Prediction Research inJapan, Science, 233, 4761, 324-330.

第6次計画:計画途中にレビュー有り(1989-1993年)

内容と主な出来事
・「長期的予知」と「短期的予知」という考え方を踏襲.
戦略:長期的な予知を目的とした観測を実施し,異常が検出された地域において集中した観測を行い,「時期」を特定するための集中的な観測を行なう.
・基礎研究として内陸地震の解明のために地域を決めて総合的な集中観測.
・GPSに代表される宇宙測地技術の導入
広域の地殻変動の連続的な高精度観測開始.
・1989年に発生した伊東沖の海底噴火発生
→伊豆半島東部の群発地震の原因がマグマの上昇によることが共通認識となった.
→同地域のマグマの上昇が傾斜の連続観測や地震観測によってモニターできる様になる.
・1993年北海道南西沖地震(M7.8)発生→奥尻島の津波災害.
ゲラ-氏による地震予知研究批判.

参考文献
日本学術会議地震学研究連絡委員会・日本地震学会 (1994), 地震予知研究シンポジウム論文集.

第7次計画:1995年4月に見直しあり(1994-1998年)

内容と主な出来事
・引続き「長期的予知」と「短期的予知」という考えを踏襲.
・基本となる観測研究:広域の観測研究や東海地域などの強化地域の観測
・基礎的研究:プレート境界や内陸地震のポテ ンシャル評価.
ポテンシャル評価:現在が地震サイクルのどの時点にあるかということを調べること.
→後に地震調査研究推進本部の 地震調査委員会の 地震発生可能性の長期評価に引き継がれた.
・1995年1月に兵庫県南部地震(M7.3)(阪神・淡路大震災,死者:約6,400名)が発生.
→地震予知研究計画の見直し, 地震防災対策特別措置法の成立(1995年),地震調査研究推進本部の設立
・基盤的観測網の構築(注4
・1998年に地震予知研究を推進する有志の会が160名の参加者による議論を集約し,新地震予知研究計画をまとめる.「地震予知の新ブループリント」と呼ばれることもある. 1999年以降の新たな建議に内容が反映された.
・平成10年4月に、地震調査研究推進本部地震調査委員会により「余震の確率評価手法について」がとりまとめられた
→以降、気象庁はこの方法を利用して余震発生確率を発表.
→現在は、2004年新潟県中越地震の発生後に気象庁が行った余震に関する情報のあり方についての検討を踏まえ、余震の見通しを発表している(注3

* 第1~7次計画のレビューが行われた.

参考文献
日本学術会議地震学研究連絡委員会・地震学会 (1997), 地震予知研究シンポジウム論文集.
特集「大地震の長期予測はどこまで可能か」 (1998), 地震2, 50, 別冊


1999年~2013年:地震予知のための新たな観測研究計画

概要

・地震の準備から地震発生にいたる全過程を理解し,地震発生にいたるモデルの構築
・地震を含めた地殻活動のモニタリングと予測シミュレーションの実現.
地震を発生させるプレート境界や活断層にどのように力(応力)が集中していくか,地震の発生に向けてどのようなことがプレート境界や活断層で 起きているか,さらに地震が発生したときのプレート境界や断層のすべりについて一連の過程として理解し, 定量的なモデルに基づいて予測をすることを目指した.
・2011年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)によって見直し.

地震予知のための新たな観測研究計画(1999-2003年)

内容と主な出来事
・計画は(1)地震発生に至る地殻活動解明,(2)地殻活動モニタリングシステム高度化,(3)地殻活動シミュレーション手法と観測技術の開発という大項目にしたがって実施された.
・大学における地震予知研究協議会の組織および計画の実施体制が大幅に改革された
企画部および計画推進部会が発足した
大学の研究は約80の課題として提案され,それを建議の計画にしたがって整理し,それぞれについて計画推進部会を構成して,進捗状況評価を行った.
・2003年十勝沖地震が発生した
1952年の十勝沖地震とアスペリティ(滑りの大きな領域)がほぼ一致していることがわかった.加速するような前兆すべりは検出されなかった.
・プレート境界の地震では,アスペリティとその相互作用により地震発生を理解する考え方が提案された.
相似地震により準静的滑りを定量的に評価できることが示された.
過去の宮城県沖地震の多様性がアスペリティの相互作用で説明された.
海溝沿いの準静的滑りの有無については観測がないため不明.
・内陸地震では,東北地方脊梁における地震発生モデルが提案された
・東海スロースリップ(2001-2005年頃)の検出
プレート境界の準静的滑りを地殻変動観測により検出できた.
・地震サイクルシミュレーションが実現した.
様々なシミュレーションが行われた.
例:地震発生の周期性を再現するもの
アスペリティの相互作用により複雑な発生パターンを示すもの.
・高感度地震データのリアルタイム流通の実現
Hi-net,大学等の地震観測データをリアルタイムで流通できるようになった.
・海底地殻変動観測の開始
大学や海上保安庁による海底地殻変動観測の技術開発が開始.
・ 津波堆積物の研究に基づいて、北海道太平洋沖の17世紀の巨大地震断層モデルが提案された.
スロー地震について*

地震予知のための新たな観測研究計画(第2次)(2004-2008年)

内容と主な出来事
・計画は(1)地震発生に至る地殻活動解明,(2)地殻活動の予測シミュレーションとモニタリング,(3)新たな観測技術の開発という大項目にしたがって実施された.
・科学技術学術審議会測地学分科会の下に,観測研究計画推進部会をつくって進捗状況をチェックした.
大学だけでなく関係諸機関もふくめて148の課題提案がなされた.大学の課題については,地震予知研究協議会の下の計画推進部会が課題の進捗状況をチェックした.
・Hi-netデータを用いた,日本列島全域の構造モデルが作成されるようになった.
・南海トラフの地震発生履歴の特徴を再現するシミュレーションが実現した
・相似地震解析を用いたプレート境界のスロースリップのモニタリングが実現した
・深部低周波地震・微動の発生源のモニタリングが実現した
震源の移動,メカニズムが解明され,プレート境界の滑りであることが有力となった.
・南海トラフにおいて,津波堆積物を用いた連動型巨大地震の履歴が示された.
・だいちに登載された合成開口レーダにより,地殻変動検出ができるようになった.・2004年新潟県中越地震
新潟―神戸ひずみ集中帯における地震発生
・2004年スマトラ沖巨大地震・津波
津波災害が,あらためて注目された
・2005年福岡県西方沖の地震
・2007年能登半島地震
海底において,震源と対応する断層があった.原子力発電における断層評価の課題が明らかになった.
・2007年新潟県中越沖地震
海底地形調査から関連すると思われる断層が見つかり,沿岸の海底調査の必要性が認識された
・2008年岩手宮城内陸地震

参考文献
Hirata, N. (2004), Past, current and future of Japanesenational program for earthquake prediction research, EarthPlantets Space, 56, xliii–l.
総合報告:地震発生の短期・直前予測(第1部) (2005), 地震2, 58, 3.
総合報告:地震発生の短期・直前予測(第2部) (2006), 地震2, 59, 1.
日本地震学会地震予知検討委員会 (2007), 地震予知の科学, 東京大学出版会.
文部科学省科学技術学術審議会測地学分科会のホームページ

地震及び火山噴火予知のための観測研究計画(2009-2013年)

内容と主な出来事
・第7次計画まで継続された火山噴火予知計画と合わせ,ひとつの計画となった.
・計画は(1)地震・火山現象予測,(2)地震・火山現象解明,(3)新たな観測技術の開発,という大項目にしたがって実施された.・2011年東北地方太平洋沖地震前
・海底地殻変動観測の観測精度が向上し,観測結果が研究に利用されるレベルに達した.
・アスペリティの階層構造(階層的不均質断層モデル)という考え方が示された.
・観測データを取り入れ,より現実的な地震活動予測シミュレーションが南海トラフを対象にして行われた.初期条件によって発生する地震が異なる現象を表現できた.
・活断層における地震発生と流体との関連を示すモデルが提案された.
・南海トラフにおけるプレート境界の滑りについて,安定すべり域・低周波微動発生域・固着域といった,滑り特性の違いに応じたモデルが提案された.
・ケーブル式海底観測システムの実用化にめどがついた
・マグマの上昇・貫入が群発地震活動に及ぼす影響についての理解が進展し、「伊豆東部の地震活動の予測」に貢献(注3

・2011年東北地方太平洋沖地震でわかったこと.
・地震前の長期的な固着の変動が明らかになった
・地震発生直前のスロースリップ域拡大が明らかになった.ただし,すべりの加速を示すような現象は検出できなかった.
・海溝沿いに大きな滑りが生じたことが明らかになった
・余効すべり域が推定され,本震時の大きなすべり域と相補的であることがわかった.・2011年東北地方太平洋沖地震後
・陸上GPSや,海域の波浪計・津波計を用いた津波即時予測手法が提案された・(公社)日本地震学会では,地震予知研究 および同学会の活動について見直しの議論を行なった.
・2012年10月に計画の 外部評価が行われた.
・2012年11月に計画の 見直しが行われた.
・内閣府で, 南海トラフ沿いの大規模地震の予測可能性に関する議論が行われた.

参考文献
文部科学省科学技術学術審議会測地学分科会のホームページ
公益社団法人日本地震学会東北地方太平洋沖地震対応臨時委員会編 (2012), 地震学の今を問う,日本地震学会モノグラフ, 1.
公益社団法人日本地震学会2012年秋季大会特別シンポジウム実行委員会編, (2013), 「ブループリント」50周年地震研究の歩みと今後, 日本地震学会モノグラフ,2.


2014年~2018年: 災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画の推進について(建議)

概要
・地震発生・火山噴火の予測を目指す研究を継続しつつも,地震・火山噴火による災害誘因の予測の研究も組織的・体系的に進め,災害科学の一部として計画を推進する.
・地震学・火山学を中核として,そのほかの理学,工学,人文・社会科学分野と連携し,総合的かつ学際的な研究を行う.

参考文献
上記建議の 用語集


脚注(地震予知検討委員会でとりまとめ)

注1:地震予知連絡会について

地震予知連絡会は,1968年の閣議了解及び文部省測地学審議会による第二次地震予知計画の建議に基づき,地震予知計画担当機関の情報交換 と情報の総合的判断のために,1969年4月に国土地理院を事務局として,設立されたものである.地震予知連絡会は, 主に地震予知計画を担当する大学,研究所,国の機関に所属する委員からなり,年4回の定例会に加えて,臨時会や地域部会などを開催して 現在に至っている.地震予知連絡会の設立当初は,大きな地震が発生した後の統一見解や,異常な現象が観測された場合の見解をまとめ, 社会に対して発表する役割も担っていた.また,持ち寄った情報を基に,観測の強化や集中などの学術的判断を下すことも任務とされた. その1つの例として,地震予知連絡会では過去に大地震の記録がある地域等を特定観測地域,観測強化地域として全国10地域を, 1970年2月に指定した.その後1978年8月には地域指定が見直され,2つの観測強化地域と8つの特定観測地域が指定された.
地震調査研究推進本部(地震本部)の発足後は,その役割が見直され,予知連の目的は情報交換と学術的検討に特化することとなった. また地域指定についても,全国的な基盤的観測網の整備や地震本部の重点的調査観測の選定,地殻活動の過程全体を理解して地震を予測するというように 地震予知研究の主流が変わってきたことから,2008年2月に指定を解消することとなった.地震予知連絡会では,発足以来, 地震予知に関わる社会の要請に応えるため,そのあり方や運営方針等を変革してきており,その役割も変化しているといえる. 現在では,地震予知研究にとって興味深い現象や問題等を「重点検討課題」として選定し,これについて集中的に検討することで, 「地震活動・地殻変動等に関するモニタリング結果を中心とした情報交換を行い,モニタリング手法の高度化を検討する」という 科学技術・学術審議会の建議に応じた役割を果たしている.参考文献
萩原尊禮(1997),地震予知と災害,理科年表読本,丸善
地震予知連絡会編(1979),地震予知連絡会10年の歩み,国土地理院
地震予知連絡会編(1990),地震予知連絡会20年の歩み,国土地理院
地震予知連絡会編(2000),地震予知連絡会30年の歩み,国土地理院
地震予知連絡会編(2009),地震予知連絡会40年の歩み,国土地理院

注2:大規模地震対策特別措置法について

大規模な地震による災害から国民の生命,身体及び財産を保護するため,地震防災対策強化地域の指定,地震観測体制の整備その他地震防災体制 の整備に関する事項及び地震防災応急対策その他地震防災に関する事項について特別の措置を定めることにより,地震防災対策の強化を図り, もつて社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的とした法律.

注3:気象庁による地震の予知・予測に関連する情報について

東海地震に関連する情報
毎月の定例の地震防災対策強化地域判定会(通称:判定会)で評価した東海地域の地震活動や地殻変動の状況の調査結果や、観測データに通常とは異なる変化が観測された場合に東海地震に結びつくかどうか調査した結果を「東海地震に関連する情報」で発表
余震の見通し
大きな地震の発生後に、余震の発生状況や、今後の余震活動の見通し、警戒・注意すべき事柄などを解説する情報
伊豆東部の地震活動の見通しに関する情報
伊豆東部で群発的な地震活動が発生した際に、地震調査研究推進本部地震調査委員会がとりまとめた「伊豆東部の地震活動の予測手法」 に基づいて地震活動の見通しを評価し、「伊豆東部の地震活動の見通しに関する情報」を発表
注4:基盤的観測網について地震調査研究推進本部の「地震に関する基盤的調査観測計画」(1997(平成9)年8月29日)において,以下の項目が地震に関する基盤的調査観測と位置づけられ,推進されてきている.基盤的観測網の設計思想やその展開・データ流通については,過去の 地震予知研究の観測におけるノウハウが生かされた.この観測網のデータは公開され,広く利用されている.(1)地震観測
(1-1)陸域における高感度地震計による地震観測(微小地震観測)
(1-2)陸域における広帯域地震計による地震観測
(2)地震動(強震)観測
(3)地殻変動観測(GPS連続観測)
(4)陸域及び沿岸域における活断層調査このうち,「陸域における高感度地震計による地震観測」は防災科学技術研究所により高感度地震観測網 (HighSensitivity Seismograph Network of Japan:Hi-net),「陸域における広帯域地震計による地震観測」は同・広帯域地震観測網 (Full RangeSeismograph Network of Japan: F-net), 「地震動(強震)観測」は同・強震観測網(KyoshinNet: K-NET, Kiban-Kyoshin Net: KiK-net), 「地殻変動観測(GPS連続観測)」は国土地理院によりGNSS連続観測システム (GNSS Earth Observation Network System: GEONET)として整備・運用されている.○Hi-net全国約800カ所に観測点が整備されている.標準的な観測点は,深度100mのボアホールの孔底に,高感度地震計・強震計・高感度加速度計(傾斜計)が,地上の建屋内にデータロガーや通信機器等が設置されている.参考文献
Obara, K., K. Kasahara, S. Hori, and Y. Okada (2005), A denselydistributed high-sensitivity seismograph network in Japan:Hi-net by National Research Institute for Earth Science andDisaster Prevention, Review of Scientific Instruments, 76, 2,021301.
Okada, Y., K. Kasahara, S. Hori, K. Obara, S. Sekiguchi, H.Fujiwara, and A. Yamamoto (2004), Recent progress of seismicobservation networks in Japan --Hi-net, F-net, K-NET andKiK-net--, Earth Planets Space, 56(8), xv–xxviii.
汐見勝彦, 小原一成, 針生義勝, 松村稔 (2009), 防災科研Hi-netの構築とその成果, 地震2, 61, 特集号,S1-S7.○F-net全国約70カ所に観測点が整備されている.標準的な観測点は,30~50m程度の横抗内に,広帯域地震計と速度型強震計,およびデータロガーや 通信機器等が設置されている.参考文献
松本拓己, 堀貞喜, 松林弘智 (2009), 広帯域地震観測 --防災科研F-netの10年--, 地震2, 61,特集号, 9-18.
Okada, Y., K. Kasahara, S. Hori, K. Obara, S. Sekiguchi, H.Fujiwara, and A. Yamamoto (2004), Recent progress of seismicobservation networks in Japan --Hi-net, F-net, K-NET andKiK-net--, Earth Planets Space, 56(8), xv–xxviii.○K- NET,KiK-net
被害をおこすような強い揺れを確実に記録するための観測網.K-NETは,全国約1000ヶ所の地表に設置した強震計からなる.KiK-netは, Hi-net観測点の地表と地中に設置された強震計から構成される.これらの観測網のデータ等は,地震ハザード・被害リスク評価などに 役立てられている.○GEONET
全国約1200カ所に観測点が整備されている.標準的には高さ5mのピラー上部にアンテナが,ピラー内部にGNSS受信機,通信機器等が 設置されている.参考文献
中川弘之・他 (2009), GPS連続観測システム(GEONET)の新しい解析戦略(第4版)によるルーチン解析システムの構築について, 国土地理院時報, 118, 1–8.
西村卓也 (2009), 陸域地殻変動観測の現状, 地震2, 61, 特集号, S35-S43.
Sagiya, T. (2004), A decade of GEONET: 1994-2003 --Thecontinuous GPS observation in Japan and its impact on earthquakestudies--, Earth Planets Space, 56(8), xxix–xli.
多田堯・鷺谷威・宮崎真一 (1997), GPSでみた変動する日本列島, 科学, 67, 12, 917-927.


その他

1962年以 前のことも含めた主な出来事の年表*
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