学校教育委員会発足のお知らせOrganization

『日本地震学会ニュースレター』1996年Vol.8 No.2 掲載)

昨年来、日本地震学会将来検討委員会において、

(1)学会活性化
(2)学会の社会的貢献

の2点を中心に、多様な角度からの検討が進められてきました。

その討議の過程で、大学や各種研究機関に所属する研究者中心に運営されてきた本学会も、近年、学校教育・社会教育関係者の会員が増加し、全会員約2300名の内、100名を越えていることが注目されました。しかしまた一方では、地学教育学会からの呼びかけに応じて設立され、本学会も参加してきた「学校科目『地学』関連学会連絡協議会」等を通じて、若者の理科離れ、就中、地学教育のおかれた厳しい現状に対する憂慮も高まってきています。

今次の阪神・淡路大震災に際しては、余震に関するデマ等さまざまな流言蜚語が飛び交いましたが、中でも「関西に大地震はない」という「誤った常識」は、震災関連死者が6,000名を越えるという、大きな被害を生む元となりました。また今年2月のニューギニア沖地震の際にも、岩手県三陸沿岸に出された津波警報の事後調査では、「自宅の場所は安全」「テレビの報道などから津波は小さいと判断した」等の理由で、 避難した所帯はわずか18.5%に留まったことが明らかになっています。HOW TO的な防災教育や防災対策は進んでいるようにも見えますが、その根幹をなすべき戦略的な対策のためには、地球科学的な知見が不可欠であるにもかかわらず、十分には生かされていないというのが、実態ではないかと思われます。

その欠点を補うためには、第一線の研究成果を広く社会に還元するべきパイプが必要であり、その一端を担うのが教育機関や教育関係者であるはずですが、研究者と教育関係者、また教育関係者同士の間でさえ、十分な情報流通や情報交換が図られてきたとは言えません。

このような状況の中、本学会の上記目的達成のための一環として、本委員会他3委員会が、当面の間将来検討委員会に属する形で、新たに発足する次第となりました。 また同時に将来検討委員会からは、各委員会設立のための委員選任の委嘱を受け、「 学校教育に関する委員会」(仮称)はさしあたり下記メンバーにより、関係者間のネットワーク構築・運営の活動を始めることになりました。

地球科学関連学会合同大会最終日の3月29日、5名の委員により設立準備委員会を開き、本委員会の今後の在り方につき、下記の基本方針を立てました。

(1)教育関係者相互、研究者と教育関係者の間の交流の場となるネットワークを作ること
(2)教育関係者への、種々データ・情報提供の窓口となること
(3)メンバーを学校教育関係者に限定しないこと

そして、活動の第1段階として、「教育関係者の現状把握と、ネットワーク作りのためのアンケート」を実施し、学校教育・社会教育に携わっておられる会員に(会員名簿から該当すると思われる方を抽出させていただきましたが、漏れている方・該当されない方がおられましたら下記連絡先までお知らせ下さい)回答へのご協力をお願いしました。結果につきましては集計中ですが、後日その骨子を公表させていただく予定です。

委員会の性格づけや今後の活動の企画については、アンケート結果をもとに進めていく予定であり、未定の部分も多々残されていますが、さしあたり今夏8月20・21日には、日本地震学会の企画制作による啓蒙用ビデオの作成に携わってこられた先生方をお迎えしての議論と懇談、東京大学地震研究所・東京都防災センター等の見学も交え、1泊2日 の第1回ミーティングを東京で持ちたいと思います(参加希望者には、後日詳細をご連絡いたします)。

なお、ネットワークの当面の対象会員は「学校教育・社会教育関係者」としましたが、上記(3)にもあるとおり、開かれたネットワークにしたいと思いますので、関心をお持ちの方は遠慮無くお問い合わせ下さい。

 委員長 桑原 央治(東京都立上野高等学校)
 委 員 今川 一彦(同志社高等学校)
     岡本 義雄(大阪府教育センター)
     酒井 久一(大阪府立西浦高等学校)
     武尾 実(東京大学地震研究所)
     三浦 泰二(静岡県立静岡東高等学校)
     南島 正重(東京都立志村高等学校)

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