南海トラフ巨大地震への備えとしての南海トラフ海底地震津波観測網の開発及び整備

受賞者(氏名)または団体名

武田 哲也,青井 真,功刀 卓,三好 崇之,篠原 雅尚,植平 賢司,望月 将志

授賞理由

過去に繰り返し発生してきた南海トラフ巨大地震は、前回の発生から約80年が経過し、その切迫性が極めて高まっている。しかしながら、高知県沖から日向灘にかけての海域はリアルタイム観測の空白域であり、その解消が急務であった。この課題に対し、受賞者らは、(1)従来の水晶振動式センサに比べ、低消費電力、小型化、高い品質均一性と安定性を実現しつつ、高感度を維持したMEMS技術を用いたシリコン振動式水圧計の新規開発・導入(Shinohara et al., 2026)。(2)将来の観測ニーズや技術革新に柔軟に対応できる「ハイブリッド方式」構造(インライン方式;S-net等、プラグイン方式;DONET等を融合)の採用(Aoi et al., 2023)。(3)専用機器開発コストを削減し、運用・保守性を向上させるため汎用機器を活用可能とする通信方式の導入(功刀, 2025)。(4)観測機器のみならず、沖合・沿岸システムの独立構成、ケーブル両端陸揚げといった多重的な冗長構成(Aoi et al., 2023)、を取り入れ安定的かつ継続的な観測運用を可能とする極めて信頼性の高い観測網として「南海トラフ海底地震津波観測網」を整備した。その観測性能は、令和6年日向灘の地震や令和7年カムチャツカ半島付近の地震等の実観測を通じて実証されている(久保田ほか, 2025など)。得られた観測データは気象庁の緊急地震速報や津波情報に迅速に提供されるだけでなく、山陽新幹線の早期地震検知警報システムといった民間での実用化も開始され、巨大地震の発生機構解明に向けた学術研究の推進と防災・減災対策の強化を両立するための不可欠な基盤となりうる。加えて、開発した技術によって得られる観測・成果を広く利活用するため安定的な運用を行っている点も評価に値する。

以上のように、「南海トラフ巨大地震への備えとしての南海トラフ海底地震津波観測網の開発及び整備」は、我が国の地震・津波防災を新たな段階へと引き上げる極めて顕著な業績である。特に上述(1)~(3)の功績を大きく評価し、受賞者らの優れた業績と地震学の発展への高い貢献を認め、日本地震学会技術開発賞を授賞する。

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