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2017年度日本地震学会技術開発賞受賞者の決定についてNews & Topics

公益社団法人日本地震学会理事会

 日本地震学会技術開発賞の受賞者選考結果について報告します。
 2018年1月31日に応募を締切ったところ、技術開発賞3団体の推薦がありました。理事会において選考委員会を組織し、厳正なる審査の結果、2018年4月20日の2018年度第1回日本地震学会理事会において、下記のとおり1団体を決定しました。なお、技術開発賞の授賞式は2018年度秋季大会会場にて執り行う予定です。

技術開発賞

授賞対象功績名

陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)の構築と地震学・地震工学・火山学への貢献

受賞団体

青井 真、淺野 陽一、功刀 卓、木村 武志、植平 賢司、高橋 成実、上田 英樹、汐見 勝彦、松本 拓己、藤原 広行、国立研究開発法人 防災科学技術研究所 地震津波火山ネットワークセンター

受賞理由

 受賞団体は、「陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)」の構築に至る、複数の優れた観測網の開発・運用を通じて地震学の発展に多大な貢献をしてきた。その主な業績は以下の通りである。

 防災科学技術研究所地震津波火山ネットワークセンターは、阪神・淡路大震災をもたらした1995年1月17日の兵庫県南部地震の発生を受け、世界でも類を見ない陸域の地震観測網である高感度地震観測網(Hi-net約800地点)、全国強震観測網(K-NET約1050地点)、基盤強震観測網(KiK-net約700地点)、広帯域地震観測網(F-net約70地点)を整備・運用してきた。これらの観測網は、緊急地震速報をはじめとする地震防災分野と、地震計等の観測データ解析に根差した地震学研究やそれを包含した地球科学の進展の両方に貢献した。また、重点的に監視すべき火山において基盤的火山観測網(V-net 55地点)の整備・運用を進め、そのデータは火山活動監視や研究活動に利用されている。
 海域においては、東日本大震災をもたらした、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の発生を受けて、海域を震源とする地震や津波の早期検知・情報伝達などを目的とした世界最大規模の海底地震津波観測網、日本海溝海底地震津波観測網(S-net 150地点)を北海道沖から房総半島沖に整備した。2016年4月には、紀伊半島沖から室戸岬沖にかけて整備された地震・津波観測監視システム(DONET 51地点)が海洋研究開発機構から移管され、その運用を行っている。

 これらの観測網の全てが、2017年11月よりMOWLASとして統合運用され、データを広く公開・共有する優れた研究基盤の構築に成功している。技術開発要素としては、
 1)良質かつ稠密な観測網データの継続的かつ安定的な取得、保存および公開
 2)観測センサー・収録機器・伝送システム等の観測技術およびデータ利活用技術の持続的開発
 3)緊急地震速報や津波即時予測、震度情報、ハザード評価などレジリエントな社会の実現への貢献
が挙げられる。

 世界最高レベルの良質かつ稠密な複眼データを供給するこの研究基盤の学術的貢献度は、地震学会秋季大会の三割を超える発表にそのデータが使用されていることを筆頭に、国内外での研究発表、国際的な査読誌に掲載された論文等にも活用されていることから明らかである。さらに、比肩しうるもののないデータの量と質は、観測データ駆動型の研究という新しい流れを産み出し、地震動や津波の即時予測、地震発生の長期評価の高度化などに貢献している。また、信頼性の高いデータを迅速・安定に供給するという技術的達成によって、関係府省庁や自治体、民間企業等に直接伝送されて防災に活用されていることも注目に値する。

 以上の理由から、技術開発と研究基盤構築の双方の面において,地震学に重要な貢献をしたものと認め、日本地震学会技術開発賞を授賞する。

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